レンタカーでスイスを走っていても鉄道ファンが沿線で写真を撮っている光景を見る事はまずない。過去、スイスで鉄チャンを見かけたのは全て駅のホームであった。唯一、数人がカメラを向けていて今にも何か来そうな現場に出くわした事がある。慌てて車を停めてその集団に加わると、やがて遠方から黒い煙が見えてきた

なんと現れたのは、弁慶号や義経号が開拓使号などの客車を牽引して本線上を走っている様な古典車両の編成で、さらに驚くのは、日本ならプッシュプルの後方は電気機関車が当たり前の様に付いて来るのだが、この列車にはさらにもう1輌の古典蒸機が付いている

よく見るとルツェルン交通博物館に展示してある1号機関車のようだ。確かに博物館から隣接の本線までレールが延びていて、その先にポイントがあるのは見た事があったが、それは車両の搬入用であろうと勝手に判断していた。まさか保存機関車が博物館から直接本線に乗り入れてしまうとは驚愕である。このような保存機関車を本線上に走らせる事が出来る技術力の高さと、それを可能にする法律のすばらしさに驚かされると共に、鉄道車両を文化財として大切に動態保存している鉄道王国スイスの懐の深さを感じた
1997年9月