箱根湯本駅の1日平均の乗降客は1万人以上。多くの観光客が小田急のロマンスカーで箱根に入る。箱根湯本が近づくと降りる準備に追われてしまいつい見逃してしまうが、ここには日本でも珍しい「三線軌条」が存在する。箱根湯本の一駅手前、入生田(いりゅうだ)から箱根湯本駅間がその場所である。幅の広い1435mmの線路を箱根登山鉄道、狭い1067mmの線路を小田急が使用するという具合だ。2006年3月までは、小田原~箱根湯本間全線が三線軌条であったが、ダイヤ改正により小田原~箱根湯本間の営業列車は全て小田急の車輛となり、三線軌条が消えたかにみえた。が、(鉄道ファンにとっては幸いな事に)箱根登山鉄道の検車区が入生田にあった為、入生田~箱根湯本間の三線軌条が辛うじて残り、検車区に戻る車両は湯本から入生田までを1435mmの標準軌を通って回送される。そして、小田原~入生田間は箱根登山鉄道の路線にも関わらず、自社の車輛が全く走らず小田急の車輛のみが走るという不思議な営業形態になっている。
廃止されてしまった三線軌条区間(入生田~風祭間)。外側の線路を使用して箱根登山鉄道モハ2形110号が走る。現在は内側の線路が残り小田急の車輛のみが走っている 1994年(平成6年)12月
入生田駅から箱根湯本に向かって上り坂が続く。普通のポイントは2か所を動かして切り替えるが、三線軌条のポイントは5か所を同時に動かすことになり、構造がかなり複雑となる
懐かしい小田急ロマンスカー3100形NSE車
1435mmレールを走る箱根登山鉄道と、箱根湯本から下ってきた1067mmレールの小田急が入生田駅で交換
入生田駅から見た入生田検車区。現在、右側線路の外側の1本(1435mm用)は撤去されている