奥羽本線山形駅のひとつ南に「蔵王」という名前の駅がある。あたかも蔵王観光の拠点のような駅名だが、観光地・蔵王へのアクセス手段は何もなく、観光客の姿も皆無だ。当時、駅前には工場が広がり、駅前と呼べるだけの広場もない、ありふれた普通の駅であった。

1990.10.2

この「蔵王駅」が、平成4年(1992年)の山形新幹線開業により、新幹線の走る標準軌に改軌(1067mm→1435mm)され、通過ではあるが新幹線が通る駅となった。普通はそこで終わりなのだが、厄介なことに蔵王駅は、駅の東西両側に日本石油、日本セメントの各工場が分立していて、それぞれが仙山線を使用して仙台まで貨車による輸送を行っていたため、標準軌の新幹線と併せて山形~蔵王間に狭軌(1067mm)による貨物輸送を残さざるを得ないという状況になった。ここに3本のレールによって2つの軌間の車輛を走らせるという「三線軌条」が出現し、山形~蔵王間には車両基地もあったことから、標準軌、狭軌が入り
乱れた線路配置が展開されたのである。

山形方面から蔵王駅構内を望む。標準軌が中央部を走り左右に狭軌が分岐していく

蔵王駅より山形方面を望む。標準軌を先に分岐し、続いて狭軌を分岐している

前面展望をしていても、ワクワクする配置だ

蔵王駅構内で重連のまま入替作業中のED78

普通電車も標準軌。不思議な感覚である

入替は日本通運の入れ替え機が担当

この三線軌条は6年間使用され、貨物列車が廃止された平成10年(1998年)に終焉を迎えた