1998年11月下旬、レンタカーを運転してベルニナ峠に向かった。ベルニナの観光拠点サン・モリッツの11月は、秋の観光シーズンも終わりスキー客が来るまでの間の閑散期で、1か月間の休業を取るホテルもある。サン・モリッツを出て山間部に入ると、車の外気温計が-30°Cを示し、フロントガラスの外側に樹氷のように氷が漂着して視界を遮り、開けたドアのロック部分は凍り付きドアが閉まらなくなった。11月のスイスは、晩秋ではなく厳冬期である

この年の数年前から、この辺りを歩き回っていたので、ある程度の土地勘があり、ベルニナ峠に続く道路からレイティッシュ鉄道ベルニナ線が俯出来るのではないかと考えてのレンタカー使用である。車を置いて歩いていくと、やがてディアボレッツァの山々が見え、手前に薄く凍ったラーゴ・ビアンコ(白い湖)が広がると、眼下にベルニナ線が現れた。それは、想像していたより遥かに素晴らしく、また、荒涼とした風景であった。やがて、モーター音と車輪の軋み音を山々に響かせながら、ティラーノ行き普通列車がやって来た

 

サン・モリッツからカラ松の林を抜けて森林限界を越えると、ベルニナ・ズオート駅。ここから2000m越えの駅が続き、最高地点はオスピッツオ・ベルニナ駅の2253m

2008年、ベルニナ線は世界遺産に登録された