美濃電気軌道が大正15年に新製したセミボ510形。当時流行していた半流線形の正面と、戸袋の丸窓が特徴のボギー電車である。昭和5年(1930年)から長期間、途中、名古屋鉄道が成立してからはモ510と改称されてはいたが、軌道線であった美濃町線で使用され続けた

40年が過ぎ、このまま美濃町線で生涯を終えるのかと思われたが、1967年に大きな転機を迎える。岐阜市内線と揖斐線の直通運転が開始されるに際し、併用軌道も走れて、さらに鉄道線規格に合う高床構造であったという事が功を奏したて、直通運転用車両としてモ510に白羽の矢が立つことになる。こうして、1967年から68年にかけて大改造が行われた。クリーム/グリーンのツートンを写真のスカーレット/ホワイトのツートンに変更し、クロスシート化、客用自動ステップ取付、パンタグラフ化、密着自動連結器化等々が実施され、あの美しいモ510が出来上がった

黒野駅にて待機中のデ512+513 1996年1月

1970年代にはスカーレット一色になって寂しい限りであったが、1987年の鉄道友の会エバーグリーン賞受賞を機に再びツートンカラーに復元され、再度脚光を浴びる事となる

本揖斐駅で発車を待つモ514  1996年1月

客席は、2人掛けシートと1人掛けシートを途中で逆転させて、うまく配置している。楕円の窓もオシャレである

2005年3月31日、岐阜の600V線区全廃により79年間の活躍に終止符を打った

現在、モ510形512~515は、各地で静態保存されているようである