明治維新から僅か10年後の明治11年。日本人通訳の若者を連れて東北地方から蝦夷地という辺境の寒村を歩いて旅をしたイギリス人女性がいた。47歳のイザベラ・バードがその人である。彼女の書いた旅行記「Unbeaten Tracks in Japan」が翻訳されて講談社学術文庫の「イザベラ・バードの日本紀行」と東洋文庫の「イザベラ・バード 極東の旅」が、発売されている。バードがUnbeatenとわざわざ書いたのは、西洋人にとっては全くの人跡未踏の地に関する冒険旅行記であるという意味が強く、我々日本人も知らなかった明治初期の東北、北海道の暮らしが見えてきて実に面白い。文章は、イギリスにいる妹に宛てた書簡集という形をとっていて、本の書き出しは旅行準備の話で若干退屈ではあるが、旅行が始まってからの文章には、引きずり込まれる。挿絵も本人が書いていて、その詳細絵からは当時の人々の暮らしが垣間見え、資料としても素晴らしい本である。お勧めの一冊と書いたが上下二巻になっていて、上巻1,500円、下巻1,280円。是非どうぞ