2004年8月、秋田に旅行の途中、山形で蕎麦屋に立ち寄った。羽前水沢駅から1km程の処にある「大松庵」である。と言っても、蕎麦を食べる事が目的ではなく、大松庵の駐車場に保存されているという旧京王帝都電鉄のデハ2400を見学する為であった。日本車輌が1942年に製造した京王帝都電鉄のデハ2400は庄内交通に譲渡された後はモハ8と名乗り、1975年の庄内交通湯野浜線廃止により、廃車となっていた

車輛は駐車場の隅に置かれていて、少し傾いてはいたが、まだバランスの取れた顔は健在であった。近くには犬と山羊が繋がれていて、犬は暑くなると車体の下に潜り込んでいた。車両の中はワラが敷かれていて、座席にも大量のワラが積み上げられていたので、夜は山羊の寝床になるのだろうなと想像出来た。いつも荒廃した廃車体をみると辛い気分になるものだが、この犬と山羊に寄り添っている京王帝都デハ2405は、気のせいか嬉しそうに見えた

東北と言えども8月の暑さで、山羊は日陰に避難していた

敷地を囲むように掘り巡らしてある水路を跨ぐようにな形で車両が置かれており、朽ち果てて水路に落下してしまうのではと心配するほど腐食は進んでいた

台車を履いたままであったが、床は一部抜け落ちていた。車体の修理は無理でも、この台車だけは残せないものかと考えていたのだが、どうなったのか?

立派な門構えを入ると中庭も建物も立派な「大松庵」

ブログを書くにあたって、うろ覚えであった大松庵の場所を確認する為、グーグルマップで「大松庵」を検索してみた。出てきたストリートビューの映像には台車が乗っていたであろうコンクリートの土台のみがあるだけで、京王帝都デハ2405の姿はどこにもなかった。勿論、犬と山羊の姿も・・・